懐かしの函館西高を卒業して58年。わたしは上磯町(現・北斗市)出身でいわゆる汽車通学生であった。毎日早朝の列車に飛び乗り朝7時頃に函館駅に着き、朝市通りを海沿いにレンガ倉庫群を横目に歩いて通学した。三段の石畳をのぼりきると重厚な造りの旧校舎にたどり着く。もちろん現在は新校舎となり、わたしが通っていた当時の面影はない。ただ僅かに校門近くにある「志高く」の石碑が昔をしのばせる。これも時代の流れであり、すべては致し方のないこと。わたしはその校舎から、毎日港を眺めあの連絡船に乗って東京に行くことばかりを考えていた。もちろん、人並みに青春の痛みというか、悲哀はあった。しかし、もう半世紀以上も前のことで、青春の過ぎ去りし日々はすべてを美しくする。そんなノスタルジックな淡い物語を残せたのも母校・函館西高があったればこそであろう。さて、これから語ることは、わたしがこの函館西高卒でよかったと思ったことのエピソードである。