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佐藤泰志の小説『市街戦のジャズメン』に出会って

                     本間 雅子(32回生)

▲『市街戦のジャズメン』収録「佐藤泰志初期作品集 もうひとつの朝」
▲『市街戦のジャズメン』収録「佐藤泰志初期作品集 もうひとつの朝」

 

昨夜遅く、私は主人の隣のデスクに向い、「佐藤泰志初期作品集 もうひとつの朝」(河出書房新社刊)に収録されている『市街戦のジャズメン』を読んだ。

以前、主人から「20頁ほどの作品だからすぐ読めるよ」と聞いていた。私は、佐藤が高校生の時に書いた作品にとても関心があった。期待をしながら本を手に取った。

 

・・・いきなり冒頭から、高校生と思えないほどの洒落た表現。私はこれまでにも佐藤の作品をいくつか読んだことがある。映画も観たことがあるが、彼(佐藤)は市街戦のジャズメンを書いたもうこの時、既にひとりの作家として熟していたのではないか。

私はまだ稲塚秀孝監督のドキュメンタリー映画『市街戦のジャズメン 作家佐藤泰志の衝撃』を観ていないが、佐藤の『市街戦のジャズメン』には、そこに書かれている空気、感性、匂い、状況までもが目に浮かんでくる。それは、前衛的な表現ともいうべきモノに、佐藤の熟した感性に触れられたからではないかと思う。

 

私は若い頃、美大生としてゴダール、リュックベッソンらの映画を多少観た。舞台の脚本も、学生演劇を通して読み、スタッフとして参加した経験があった。この歳になり、佐藤泰志の作品に出合い、凄い才能溢れるモノに出会った。今までの陳腐な経験が吹っ飛んでしまうくらいの衝撃を感じた。

是非とも『市街戦のジャズメン』の映画が観たくなった。