気がつくと私の書棚は、北斎・広重に始まり江戸期の浮世絵版画(錦絵)を中心とした本でいっぱいになりました。最初は、その当時の素晴らしい浮世絵作品に一枚一枚直接触れられることにただただ感動していました。
初めて神田神保町の専門店に足を運んだ日には、主人と待合せをして二人で伺いました。もう6年も前のことです。少々緊張しながら恐る恐る階段を上り、「こんにちは。初めまして・・・。」
落ち着いた雰囲気の店内の壁には、美人画などの浮世絵や風景画が飾られ、本棚に年季の入った本がぎっしりと並んでいました。中央のテーブル席に案内していただいて、奥の部屋からたくさんの浮世絵が運ばれて目の前に置かれました。
「こちらは広重の浮世絵です。どうぞお手に取ってご覧ください。・・・・。」私はハンカチで手を拭き、生まれて初めて江戸時代のホンモノの浮世絵を次から次へと見比べました。「気に入った浮世絵があったら、教えて下さいね」と店の方。
主人が私の左隣・そばにいてくれたのがとても心強く思いました。私は浮世絵に真剣に向き合い、只々どの作品が魅力的で素晴らしいか、私の小さな財布を確かめながらやっと決めました。浮世絵の時代背景など、店の方の話を興味深く聞きながら、とっても嬉しかったのを覚えています。
浮世絵を眺めていると、江戸時代の庶民文化に触れる楽しさがあります。私の浮世絵入門日の思い出です。
▲歌川広重「東都尾張町繁栄之図」嘉永6年(1853)
▲歌川広重「東都名所 高輪月の景」弘化頃(1844頃)
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