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佐藤泰志原作映画化5作目「草の響き」が函館で撮影、来秋公開

 

井田ゆき子(20回生)

西高18回生の作家、佐藤泰志が亡くなって、今年で30年になる。10月10日の命日に、5作目となる「草の響き」の映画化が発表された。これまでの4作と同様に函館で撮影し、2021年秋の公開予定だという。「草の響き」は1979年発表の初期の作品。精神科に通院し、治療のためにランニングを日課とする主人公は、同様の経験があった佐藤泰志自身で、主人公が道で出会った若者「ノッポ」と心を通わせる姿を描く。

 

企画・製作・プロデュースを務めるのは、過去4作を手掛けた函館市民映画館シネマアイリスの代表、菅原和博さん。「佐藤泰志の没後30年と映画化第1作『海炭市叙景』から10年となる今年、映画を作ろうと考えていた」という。1月には監督のオファーや脚本の準備を進めていたが、新型コロナウイルスの流行は映画界も直撃した。「コロナ禍で映画館の経営は厳しいし、人々の暮らしも暗転した。こんな時代に映画を作ることの意味を考えていた。いくら考えても答えは出ない。おとなしく家に引きこもり続けるべきなのだろうか。そんな中、多くの人たちが映画館を支援してくれた。映画ファンのためにもできることは映画を作ることだと思うようになった。映画を必要としている人たちがいる。佐藤泰志の文学を大切に思っている人たちがいる。私も『草の響き』の主人公のように走りだそうと思う」

 

メガホンをとるのは「フレンチドレッシング」「なにもこわいことはない」の斎藤久志監督。「ただ走っているだけの作品で、小説ならこれでいいですが、映画は客観的に立体化しなければいけないので、それをどうするか。菅原さんに『アメリカンニューシネマにならないか』といわれたので、なるほどねと思いました。僕はニューシネマではないけれど『長距離ランナーの孤独』という映画を思い浮かべました」

 

この原稿を書いている私は佐藤泰志の2級下で高校時代からつきあいがあり、泰志さんから「長距離走者の孤独」という小説を読むようにすすめられたことがあった。「草の響き」はこの作品が念頭にあって書かれたような気がする。初の芥川賞候補となった「きみの鳥はうたえる」(河出文庫)に収録されている60ページくらいの短編なので、未読の人にはぜひ拝読を勧めたい。来年の公開を楽しみに待ちたい。

 

 

 

▲ 高校時代の級友たちと一緒に。

佐藤泰志さん(写真上:左端、下2列目右端)

 

写真提供/折田信一(2枚とも)